出版社:梓出版社
判型:四六判
ISBN:978-4-87262-715-2
写真はどこに向かおうとしているのか。過去から現在までの写真の歴史を俯瞰しながら、写真のこれからの動向を考える
目 次
は し が き
1 写真の本質とは何か? 写真史から考える
・カメラ・オブスクラとモンタージュ
・影の発見はレンズとライティングによってもたらされた
・写真が誕生する以前の写真的視覚
・ヘリオグラフィに見る写真の起源を辿ることの難しさ
・ダゲレオタイプの果てにあるAIによる顔認識
・写真を成立させるのは線ではなく面である
・潜像の発見 写真は見えないものを、見えるようにした
・現像のメタファとしての「中つ国」
・現代におけるシャッターの意味の変容
・カロタイプの発明によってイメージは場所から解放された
・ガラス素材の導入と湿板写真
・ゼラチン乾板と笑顔の発見
・コダックによる現像のバックヤード化とフィルムによる「決定的瞬間」の神話の誕生
・ライカは映画フィルムを転用して、プリントサイズは絵葉書を基準にした
・フィルムによる連続撮影と写真のシークエンス
・カメラメーカーではなく、コンピュータメーカーがレンズ開発競争を無効にした
・カルティエ=ブレッソンの写真集Images a la sauvette は、「決定的瞬間」ではなく「かすめ取る」イメージ
・写真と映画に含まれるブレの意味
2 写真の本質とは何か? 色彩から考える
・カラー写真の歴史
・写真家たちによるカラー写真の受容
・現代において写真に色をつける意味とは?
・色に含まれる罠
3 写真は「得も言われぬもの」をすくいとる 無意識と心霊写真
・無意識の可能性と、さまざまな回路
・撮れちゃった写真と、写真に入り込むバグ
・ウィリアム・マムラーと心霊写真の時代
・心霊写真の時代に見る写真と人々の欲望
・日本における心霊写真のポストモダン
・生成AIは現代の念写である
・場所に根づく心霊写真と場所に根づかない生成AI
4 写真を語ることは難しいのか?
・写真を語ることと共同性
・写真を直接語るのではなく、迂回路をつくる
・ポートフォリオを作る
・写真をどう並べ、どう収めるのか
・作品の選考において審査員の意見は八割がた一致する
5 SNS時代の写真の役割は、記録からおしゃべりになった
・分水嶺は一九九五年 カメラを取り巻く環境の整備
・『デジグラフィ』執筆の動機とは
・蓄積性の問題 膨大なデータ量の管理がコストになる時代
・保存の本質はメンテナンス
・写真はAIがサジェストする時代
・写真によるおしゃべりは新しい神話や物語を生むか?
・ウェブサイトの時代とSNSの時代
・SNSで「いいね」をもらう写真には既視感がある
・ユースフル・フォトグラフィは、新しい認識や世界像を提示する
・写真の消去性 現代の写真は消去されなかったものの残り
・写真表現の物質性と、透明な存在になったスマートフォン
・写真を見せる、交換する、コレクションする 現代の欲望はSNSにつながる
・猫写真に見るSNS以降の写真の特徴
・食べ物の写真と建築写真は、「既視感」と「いいね」で構成される
・撮っている自分は何者なのか? 近代的自我への疑問
・セルフィー 「ここにいる自分」に価値がある
・「盛り」の思想 顔は自分のものでしょ
6 生成AIは写真家の夢を実現するのか?
・ボリス・エルダグセンの「Pseudomnesia: The Electrician」
・なぜフォトリアルなのか? その理由が求められる時代
・写真コンテストよりも、アーティスト・イン・レジデンスをやるべき
・生成AIはInstagram によって準備されていた
・写真を忠実に学習している生成AIは、既視感からは逃れられない
・AIが生成する画像はコラージュに類似するものか?
・生成AIは出力主義 写真家は入力行為のために存在する
・見えないものを見ることが写真家の夢 生成AIはまだまだ物足りない
あ と が き