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岡山県在住の写真家・山口聡一郎による段ボールとコピー用紙を用いたブリコラージュ写真作品を多角的にアプローチした1冊
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1959年佐賀県出身、岡山県岡山市在住の写真家・山口聡一郎の作品集『デッサン』をふげん社から刊行いたします。
1200x900mmの大判の段ボールをキャンバスに、A4サイズに分割したモノクローム写真を16枚貼り込み、塗装を施し制作された7つのシリーズ「月の光」「少年の森」「クリアーウォーター」「ビーチ」「ドームHIROSHIMA1982」「放哉」「デッサン」を、作品図版と展示風景、作品解説とともに収録しています。2023年に奈義町現代美術館の個展で発表した作品も含まれます。
本作は、1983年に東京国立美術館で開催された展覧会「現代美術における写真」に衝撃を受けてから、長年のクラシックな写真行為を経て、約40年越しに写真を用いた新しい表現を模索する中で生まれました。
被写体は、自宅の裏にあるクヌギの森や近所を流れる吉井川、浜辺に流れ着いた漂流物や、原爆ドーム、尾崎放哉の終焉の地、ヌードなど、多岐に渡ります。段ボール、コピー用紙、防腐剤など市販の工業製品でブリコラージュ的に制作された本作は、出来上がったセピア調のイメージや粗野な素材の質感から、鑑賞者の時間感覚を歪ませます。また、分割されたフレームは、窓枠のような視覚効果をもたらし、まるで被写体が窓越しにいるような臨場感をもたらします。
本書には、遠山健一朗(奈義町現代美術館 学芸員)、能勢伊勢雄(写真家・美術展企画)、髙木遊(金沢21世紀美術館 学芸員)3名の寄稿と、土田ヒロミ(写真家)と作家本人の対談を収録しており、作家キャリアを概観しつつ、近年の新しい試みに多角的にアプローチします。
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「山口がこれらのイメージを、脆弱で燃えやすく、腐りやすい素材をメディアとして使用することは、ある種の諦めと絶望、現在という刹那への畏れ、そしてオブジェとしての芸術作品がもつ永続性への憧憬が入り混じった表現として昇華されている」
(髙木遊「支持体としてのプア・オブジェ 脆弱な物体」)
「それは誰もが真似できる手法で、そこには特別な技術は必要ない。むしろ実践する者の身体の揺れ・ムラこそが、作品のオリジナリティに直結する」
(遠山健一朗「零れ落ちたものを拾う」より)
「写真に加えられた「行為」の集積という非可視のエネルギーの直面するとき、そこにフルクサスのハプニング的行為と共通項を有してくる。この塗布されたニスがモノクローム写真にこれまでに無い語り口を付与している。この点を見落としてはならない」
(能勢伊勢雄「我々は2つの外部に晒されている」)
■プロフィール
山口聡一郎 Yamaguchi Soichiro
1959年佐賀県藤津郡太良町生まれ。1980年法政大学中退。1981年故小森孝之氏主宰「写塾下高井戸」参加。1982年東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ・アカデミー)卒業。2002年岡山県に移住。2014年岡山市にて「ギャラリー722」を運営。2020年、写真誌『陰と陽』刊行。主な写真集に『都市回路』(矢立出版、1993)、『FRONT WINDOW』(蒼穹舎、2013)、『Driving Rain』(Folder、2013)など。
■書誌情報
山口聡一郎『デッサン』
2024年9月30日発行
著者:山口聡一郎
寄稿:
遠山健一郎(奈義町現代美術館 学芸員)
能勢伊勢雄(写真家・美術展企画)
髙木 遊(金沢21世紀美術館 学芸員)
対談:土田ヒロミ
デザイン:武田厚志
発行所:ふげん社
サイズ:B5(h257×w182mm)
仕様:クーターバインディング製本・ガンダレ
頁数:96頁
定価: 3,960円(税込)
ISBN 978-4-908955-36-5