出版社:草思社
ページ数:136ページ
発売日:2023/3/1
冷たく燃える詩情に戦慄する、衝撃の第二歌集!
「霊魂(プシケエ)と称ばれてあをき鱗粉の蝶ただよへり世界の涯の」
「みなそこにみなもはかげをなげかけてながるる時は永遠の影」
「蓮(はちす)いちりんみちたりて燃ゆ生き死にの条理のよそに浮かむかにみえ」
本書は2013年に連作「忘却のための試論」で角川短歌賞を受賞、2016年にデビュー歌集『忘却のための試論』により現代歌人協会賞を受賞した新進気鋭の歌人、吉田隼人氏による第二歌集です。
本集のページをめくってまず気づかされるのは、文体の洗練です。第一歌集以上にぎりぎりまで研ぎ澄まされた文語の調べと漢語とが緊張感を孕みながら均衡し、古典的な格調の高さが感じられます。
そしてもう一つ驚かされるのが、作品に通底する世界観です。荒涼たるこの世界に生きる苦悩がモチーフとなり、彼岸の森閑とした世界へのあこがれと、此岸での時に毒々しいまでに華やかで劇的な苦しみとが、やはり作品の中に緊迫しながら同居しています。
このことは、西田幾多郎の文章をエピグラフとした作品群をはじめとして、哲学用語が違和感なく歌われていることの理由でもあって、徹底的に厳しい内省を強いたうえで認識された明澄な世界観――伝統的に理想とされてきた「幽玄」に近い境地――がかくも美しく表現されていることは奇跡的といっても過言ではないでしょう。
冷たく燃える詩情を是非ご堪能ください。
(出版社紹介文より)