インベカヲリ★『理想の猫じゃない』(サイン入り)
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インベカヲリ★『理想の猫じゃない』(サイン入り)

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出版社:赤々舎 発行年:2018年 サイズ:258 × 211 × 12 mm 2019年日本写真協会賞 新人賞 受賞作 本書は写真家インベカヲリ☆による 62 名の女性のポートレートと言葉で構成されている。 インベは撮影前にモデルにインタビューをして、その内容からインスピレーションを受けたシチュエーションで撮影するという手法で、女性を 10 年以上撮り続けている写真家だ。 全身タイツを着る者、ハダカで犬の散歩をする者、着衣のまま浴槽に浸かる者、便器に座りながらフライドチキンを頬張る OL など、社会や他者から規定される「理想」からはみ出す女たちの肖像に、ひりひりと鬼気迫るものを感じる一方で、喜劇的に映るのが不思議である。 前作『やっぱ月帰るわ、私。』との違いは、ポートレートの間にテキストが挟まれていることだ。 モデルが語ったことを元に、一人一人のエピソードがインベにより綴られている。 女性という性は、歴史的に長らく他者から見られ、語られ、評価される存在であった。インベが写す女性たちも例外なく他者から見られることに意識的であり、社会が彼女たちに求めるものに敏感に反応している。何らかの役割を演じたり擬態したりながら現代社会をサバイブする彼女らは、インベの前でその舞台裏を痛々しいほど赤裸々に語る。映画のようにドラマティックな彼女たちの物語は、哀しく、可笑しく、そしてたくましい。 しかし、これは彼女たちの重厚なドキュメンタリーである一方で、社会という大きな舞台で演劇的に生きる彼女たちが、インベが形づくる舞台でカメラの前で演じてみせるという、入れ子状のフィクションとも言えるのではないか。 写真は、撮影者がどれだけ意図的にフレーミングしたとしても、そのメディアが持つ偶然性により、思いがけない無意識の部分が浮かび上がることがある。入れ子の中にいる彼女たちを「写真」というフィルターで見ることで、虚実の境目がより一層曖昧になる。 そこに「テキスト」というメディアが加わったことで、彼女たちの世界はさらに重層的で奥深いエンターテイメントになった。どこまでが彼女たちの語った(あるいは騙った)内容で、どこまでがインベによる創作なのか。 虚実入り混じる『理想の猫じゃない』の世界は、他者が形成する自分の像と、見せたい自分、それらのあいだで引き裂かれそうになりながらも一日一日をなんとか生き抜いていこうとする女性たちそのものである。生々しさとポップさの絶妙なバランスで彼女たちのリアルを伝える、インベの鮮やかな手腕は見事である。 (ふげん社店主・関根 史)